小学生の頃、友達と集まって学校近くの大きな森の中に秘密基地をつくった。なるべく通りから見え難く、ただこちらからは外がよく見えるような場所で、ある程度の平場があり、あまり暗くなく、風が抜け涼しく、居心地の良さそうな場所を探して森の中を探検した。見つかったその場所に捨ててあった家具を運び込んだり、家から漫画本を持ち込んだりして、特別な自分たちだけの秘密の居場所をつくった。その経験は大人になった今も子供の頃の原風景として残っている。
この敷地は住宅一軒を計画するにはとても広大であった。約900m2の敷地に100m2の平屋をつくると残りの800m2は外部空間として残る。その外部空間をどのように計画するかがこの住宅のテーマのひとつになった。施主は極力オープンに生活したいが、外から見られることについては大きな抵抗があった。外部からの視線のカットには塀をつくることが簡単であるが、このような広大な土地では、隣地境界線上に単純に塀を立てる場合、土木的でヒューマンスケールを超えたものになってしまう。また金額的にも高額になってしまう。
我々はこの広い外部空間を小さな独立した沢山の壁で区切っていき、隣地や道路からの視線をカットしつつ、閉じているようで、抜けもある小さな場を複数つくる提案をした。そしてその小さな場と呼応した建築(内部空間)を目指した。内部空間を含む建築は、凹凸のある平面計画とし、短い壁でゆるく区切られた外の小さな場が内部に入り込んでくる。
独立壁でゆるく囲まれた小さな場は、オープンとクローズの間のようなバランスの取れた居場所となった。植えられた樹木や植栽は年を重ねるごとに成長し、近い将来、壁と樹木が深く入り混じった、より森に近い外部空間ができあがる。生活の場は、まるで子供の頃に体験した森の中の秘密基地のような、ひっそりとしつつ居心地のよい自分たちだけの特別な空間になると思う。
鈴木竜太/サンゴデザイン
用途 | 専用住宅 |
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所在地 | 埼玉県羽生市 |
主体構造 | 木造 |
敷地面積 | 490.67m² |
建築面積 | 108.36m² |
延床面積 | 118.26m² |
設計期間 | 2016.04- |
施工期間 | -2019 |
共同設計 | 乙坂設計アトリエ |
構造設計 | 桑子亮/桑子建築設計事務所 |
写真 | 淺川敏/ZOOM(※のみSangoDesign) |
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