引っ越しなどで住居が変わる時、自分の体と共に移動するものは何だろうか。主に家財道具と言われる家具や生活用品、思い出の品など、多くの” 物品” が思い浮かぶ。私たちが関わったこのプロジェクトでは、それらの物品は最小限とし、長い時間一緒に暮らした空間を構成した多くの” 建材” と共に移動する。
人生の大半を過ごした大きな旧家の取り壊しが決まり、新しい環境にひとりで移り住むことになった母親を思い、遠方で暮らす娘たちが始めたプロジェクトである。新たな敷地には約築 40 年のハウスメーカー住宅が建っており、これを改修することになった。改修にあたり私たちに相談された要望は、旧家で使われていた建具や素材を極力再利用してほしいということであった。
私たちの提案は、既存外周部の壁を厚くし、室内の快適性を高める断熱補強を行う。そしてその新しく内側に付加した壁の開口サイズを旧家の建具や素材に合わせて調整し、それらを多彩に組み込というものであった。旧家から移す古材を施主と細かく選定し、寸法を正確に実測した後、丁寧に外しそれらを新居の適した位置に落とし込む。旧家から再利用した建材は、障子や襖を含めた大小様々な建具だけでなく、柱や床板、天井材、長押し材、窓台、照明器具など多岐に渡った。またベースとなる部屋の大きさやモデュールの違いから旧家の完全再現ではなく、新たな空間に相応するように建材の使い方や位置を考え直し計画した。
できあがった空間は、新しい部分と時間が刻まれた古材が自然に組み合わされた、静かで落ち着いたものとなった。ここで始まる新しい暮らしは、母親が旧家で過ごした思い出の記憶と共に新たな生活の時をゆっくりと積み重ねていくだろう。
用途 | 専用住宅 |
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所在地 | 東京都 |
主体構造 | 軽量鉄骨造 |
敷地面積 | 129.13㎡ |
建築面積 | 66.28㎡ |
延床面積 | 113.82㎡ |
設計期間 | 2019.09-2021.06 |
施工期間 | 2021.07-2022.03 |
施工会社 | 内田産業 |
写真 | 淺川敏/ZOOM(※のみSangoDesign) |
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