連続する小さな場面がつくる多彩で豊かな全体
この計画は、夫婦と娘の3人家族のための都市型住居である。敷地は都心で駅からも近く、とても利便性の高い場所にある。建主は郊外の広い土地と、都心のこの小さな土地を比較し悩んだ末、この15坪の小さな土地で生きていくことを決意した。私たちは、この小さな土地に適した生活、現代の新しい都市型住居のあり方を模索した。
建物のほぼ中央に1階から屋根まで貫く直径約50cm、長さ約10mのヒノキ丸太の巨大な通し柱を建て、それを構造的な要とし、その周りにたくさんの小さな床を取り付けた骨太な住宅である。また内外部の複雑な要望や意図、規制などの必要に合わせて床ごとに高さ調整を行った。そのずれた床により大小さまざまな開放的な空間が連続し、抜けのある広がりをもった空間となった。閉じたひとつの象徴的な空間は分散され、開かれた部分の集合体となっている。
また、駐車場を兼ねた玄関アプローチ、洗濯物を大量に干せる物干しバルコニー、ベンチとして座れる階段テラス、天然芝を植えた屋上庭園など、坪庭のような多彩な外部空間も複数の小さな床により生み出されている。それら立体的に配置された外部空間は、内部環境に光や空気の循環を与える。また外壁には高知県水切瓦の小庇の如く、水切りを何段にもわたって回すことで、小さな水切りの集合によって外壁を保護している。
大黒柱は、敷地からそう遠くはない神奈川県南足柄市の樹齢110年のヒノキ材を使用した。衰退が懸念される地場林業の業者から、ほとんど加工を要しない状態の無垢の木材の購入と使用は、安価に輸入される海外の加工品にはできない国産材使用のメリットのひとつである。
この住宅は、あえて床を増やし複雑な構成とすることで、家族の生活に応じた多様で立体的な空間を生み出した。大黒柱はそれらの空間を貫く芯となり、断片的な空間に全体性を与える。
大黒柱と小さな床の立体的な連続空間は、現代における都市型住居の新しい形式のひとつになると考えている。小さな場面の連続が多彩で豊かな全体を生み出すのではないだろうか。
用途 | 専用住宅 |
---|---|
所在地 | 東京都大田区 |
主体構造 | timber frame |
敷地面積 | 49.59m² |
建築面積 | 29.61m² |
延床面積 | 71.43m² |
設計期間 | 2014.05-2015.07 |
施工期間 | 2015.07-2018.08 |
構造設計 | 桑子亮/桑子建築設計事務所 |
設備設計 | 高槻真佐子 |
施工会社 | イケダ工務店 |
写真 | 淺川敏(※のみSangoDesign) |
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